高齢化による基礎疾患保有者の増加、移植醫療の進展に伴う免疫抑制剤の長期使用、がん治療などによって免疫力が低下し、重篤な真菌感染癥の発癥リスクも高まっています。真菌感染癥の診斷では病原體の培養に數日から數週間の時間を要するケースも多いため、カブトガニの體液を利用した血液検査薬(リムルス試験)による血中β-1,3-D-グルカン測定法が、診斷補助法として活用されています。しかし、β-1,3-D-グルカンは一部の細菌や植物(ガーゼ)などにも含まれており、リムルス試験では稀に偽陽性反応が起こることが知られていました。そこで私たちは真菌(カビ)のみが放出する特徴的な多糖構造であるβ-1,6-D-グルカンに著目し、β-1,6-D-グルカンのみを特異的に見分ける方法の開発に著手しました。

私たちは大腸菌で大量かつ安価に安定供給できるβ-1,6-D-グルカン反応性プローブ(BGP)の作製を試みました。多糖に対する強い構造特異性?結合能を求め、エンド型β-1,6-D-グルカナーゼを機能改変し、これを新しい BGP として応用出來ることを発見しました。改変型酵素を用いた ELISA 様試験では非特異的な反応は認められず、長鎖β-1,6-D-グルカン構造のみを高感度(定量限界:1.5 pg/ml)に検出することが可能となりました。また、深在性カンジタ癥のマウス感染モデルの血中からβ-1,6-D-グルカンを検出することに成功しました。さらに、250 株以上のカンジダ菌(臨床分離株)を用いた培養実験では、培養上清中にβ-1,6-D-グルカンが放出されることを明らかにしました。これらの成果から、深在性真菌癥の新しい血清診斷薬創出への機能改変酵素の応用が期待されます。今回の検討では単一の BGP のみを使用しましたが、様々な多糖構造に特異的に反応する BGP を組み合わせることにより、將來的に菌種特異的な構造を見分けることも可能になると考えられます。

本成果は科學研究費および工學院大學総合研究所プロジェクト研究の支援により得られました。

【論文情報】

Development of a novel β-1,6-glucan-specific detection system using functionally modified recombinant endo-β-1,6-glucanase
Daisuke Yamanaka, Kazushiro Takatsu, Masahiro Kimura, Muthulekha Swamydas, Hiroaki Ohnishi, Takashi Umeyama, Fumitaka Oyama, Michail S. Lionakis and Naohito Ohno
掲載誌: Journal of Biological Chemistry
DOI: 10.1074/jbc.RA119.011851
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工學研究科 生命工學研究室 博士後期課程3年 木村 將大 mail:[email protected]
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